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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(オ)920号 判決 1957年2月15日

主文

原判決を破棄する。

本件を広島高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人栗原良哉、同三宅清の上告理由第五点について。

原判決の認定したところによれば、上告人は訴外大東造船株式会社の代表取締役であつて同会社の代表機関として本件土地を占有しているというのである。そうすると、本件土地の占有者は右訴外会社であつて上告人は訴外会社の機関としてこれを所持するに止まり、したがつてこの関係においては本件土地の直接占有者は訴外会社であつて上告人は直接占有者ではないものといわなければならない。なお、もし上告人が本件土地を単に訴外会社の機関として所持するに止まらず上告人個人のためにも所持するものと認めるべき特別の事情があれば、上告人は直接占有者たる地位をも有するから、本件請求は理由があることとなるが、右特別の事情は原判決の確定しないところである。しからば原判決が、上告人を右訴外会社の「代理占有者としての直接占有者」であると判示しただけで、個人としての上告人に本件土地の明渡しを命じたのは、法人の占有に関する法律上の解釈を誤つた結果審理不尽、理由不備の違法を犯したものであつて、この違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから原判決はこの点において破棄を免れない。論旨は理由がある。

よつて爾余の論旨に対する判断を省略し、民訴四〇七条により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克)

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